高田馬場在住歴1年の会社員です。

住んで一年目にこんなに街の様子が変わる事態になるとは、想像もしていませんでした。

西早稲田三丁目 「升や」さん

勝手ながら「馬場の実家」と呼ばせてもらっています。

カウンター席のみの狭い店内、ご夫婦二人だけで営む小さなお店です。

この店を知ったのは、ほんの偶然でした。

たまたま店の前を通りがかった際、外に置いてあるメニュー看板の中に私の大好物である「つみれ汁」の文字を見かけたからです。

ただ、どこからどう見ても入りやすい佇まいではありません。

中の様子を伺おうにも磨りガラスの扉の向こうは何も見えず、外に置いてある看板だけが唯一の手がかりでした。

口コミサイトを調べるのもなんだか野暮だな…そんなことを考えながら店の前を小一時間ほど行ったり来たり。

結局、つみれ汁の魅力には勝てず暖簾をくぐりました。中に入ると、壁には達筆で書かれたお品書きが所狭しと貼られていて、何にしようかと悩むところから始めました。

升やさんのメニューはお魚と旬の食材を活かした和食が中心です。

今の時期ならこれは食べておけ!というものが必ず置いてあります。

季節と店主の気分によりその内容は入れ替わり、素材の旨みを殺さない優しい味付けに毎度心が癒されます。

決して料理が得意とは言えない自分は、この店のおかげで四季の味わいを楽しめています。本当にありがたい。

ちなみに、何回か来ればわかりますが、この店の料理にハズレはありません。

何を食べても本当に美味しいんです。へしこや塩辛、あん肝やカラスミなどの珍味類も全てお二人の手作りというから驚きです。

もちろん私の大好きなつみれ汁も、出来合いの練り物ではなく、注文を受けてからいわしを叩きはじめます。

そして、この店の良さは料理だけではありません。一見寡黙そうに見えますが博識でユーモアあふれるご主人と、ハキハキ喋る明るくて優しいママさん、お二人の温かな人柄もまた大きな魅力なんです。

時々(というか毎度)カウンターの内側で小競り合いになるんですが、口論しつつも息はピッタリで、手元は止めずにパパッ料理が出てくるあたり、熟練夫婦の技と絆を感じます(笑)

自然体のお二人を見ていると、まるで実家に帰ってきたような…、自分の親と接しているような…、そんなホッとした気持ちになるんです。以前、朝食を作る余裕がないともらしたとき、その帰り際に『これ明日の朝に食べて』とおにぎりを持たせてくれたこともありました。

先日「あと30年は頑張って店を続けてね」と伝えましたが、「それまで生きてられないよ!」と返されてしまいました(笑)でも本当に、心から、長く続けてほしいなあと思っています。

 

高田馬場には升やさんのように家族経営、または個人経営のお店が多い気がします。私と同じように、どこかのお店のことを実家、あるいは子供宅、または友人宅のように感じてらっしゃる方って実はいっぱいいるんじゃないでしょうか。

コロナ渦でどこのお店もたいへんな状況かと思いますが、誰かにとっての大切な場所が一軒でも多く、永く在り続けてほしい。そう願って止みません。

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SHOP DATA

升や
住所:東京都新宿区西早稲田3-29-5

tel.03-3203-2322

席数:8席


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