6年住みました。早稲田と馬場の中間に。
早稲田通り沿いにある、ちいさな店、珈琲家庭料理 aunt、とホームページにはあるけれど。それでは足らないので、その分を書こうと思う。
同じ人と二度、差し向かいで行くことがなかったのに理由はあったろうか。どこにも似ていない居心地のせいで、なかなか紹介しづらかったということはあるかもしれない。そしてでもそれ以上に、そこで向かい合ったが最後、相手に入ってしまわせるところだったということではないか、そこが。
カレーの記憶は無い。コーヒーならある。味ではない温かさ。それ以外にあるのは、木目と背中。本棚に背表紙はない。働く人、居る人が住んでいるようにしか思えなかった。なんといっていいか。家から近かった。それもある。特別なときにしか行かない。そう思わせる空気があった。そんなものはなかった。前言は消え去った。そんなものはなかったし、落語の寄席があった。観たことはない。ドアの外から見た。自分がドアの外から見られたことはあった。ある打ち上げのことだ。そのことは書かない。その形の記憶として。私に沈んでいる。
打ち上げが行われた。どの打ち上げが。言えることはあるだろうか。再現することはかなわない。値段が上がった事を心配した。それで続いてくれと願った。すぐには足を運ばなかった。店の前は通り過ぎた。バナナケーキ。店の後ろを通り過ぎた。どちらの時も気にかけていた。古本屋よりも奇妙に気にかかった。怖くてまだあるのか確かめられずにいる。無かったときのこの言葉を用意し切れていない。もし用意するならこんな感じになるだろうか。行かなくて、よかったのだ。やはり足を運ぶ、べきだった。いいや、できるだけ運んだつもりだ。そんなことはないもっと運べたはずだった。そんなことはない、そうだ。その通りだ。あなたは足を運ぶべきだった。それがそうするべき理由になったはずだ。香りがする。匂いというよりも。香りだ。香りの輪郭がそれだけである。中身はすり落ちている。そういうことで。置いてきたのだ。早稲田通り沿いにある、ちいさな店に。煙に纏わりつく紅い帯、筋肉の痺れは臀部の奥、頸のおそらく後ろ側。
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SHOP DATA
珈琲家庭料理 aunt
住所:新宿区西早稲田3-15-2