高田馬場には日本で最初の点字図書館があります。
「社会福祉法人 日本点字図書館」です。
JR髙田馬場駅の戸山口改札を出て左方向へ、今ある「すき屋」方面へ坂道を登り、「すき屋」を過ぎたあたりで建物が見えてきます。
建物の正面には無数の鎖が吊り下がっていて、とても印象的なのでご存知の方も多いと思います。
この鎖は「溢れる滝」を意味しているのだそうです。
そして、その滝の雫の一つ一つは「知識」。
視覚に障害がある人に溢れるほどの「知識」を提供したいという思いから、これは「知の滝」と呼ばれているそうです。その意味を考えながら近くに寄った際にゆっくり見てみるのもいいかもしれません。
創立者は本間一夫氏。
「日本盲人図書館」として1940年に創立し、その後1943年に日本で最初の点字図書館棟が落成。これが今の日本点字図書館です。
戦争の空襲で一度は全焼しました。その際、2300冊の点字図書とともに疎開した本間一夫氏は、戦争のさ中で点字図書を3000冊に増やし、再疎開先の北海道増毛の実家から点字図書の貸し出しを行っていたそうです。
今回はそれほど詳しく歴史に触れませんが、この話を聞いた時、本間一夫氏は「どうしてそこまで出来るのだろう?」と思いました。
僕なんか、すぐに損得で物を考える癖がついてしまっていて、人のためにって余裕はなかなかないもので…。
視覚障害者の読書環境向上に人生の全てを捧げた本間一夫氏。
彼について個人的にもっと知りたいと思いましたが、それはまた徐々に調べて報告していきたいと思います。
さてさて、この日本点字図書館、本館は4階建てで別館は地上3階地下2階までの建物となかなか広い。
その中では点字図書の貸し出し以外にも、色んな事業やサービスが行われていました。
今回、館内をご案内していただいた伊藤さんです。
よろしくお願い致します!
今、僕は入り口入った1階にいますが、館内のご説明は4階から順に写真とともにご覧ください。
早速スタートです。
4階は録音図書の製作フロアになっています。点字図書館ですが録音図書もあります。一冊一冊、丁寧に朗読して録音図書を製作していくそうです。録音図書はオープンリールテープの時代からあったそうです。今ではデジタル化が進んでいるので、すぐにデータのコピーや削除が出来ますが、その当時はテープの切り貼りで手がかかったみたいですよ。
4階では、録音図書を収録するスタジオが沢山ありました。
スタジオの中はこんな風になっています。
日本の視覚障害者数は約32万人と言われています。その中で点字を読める人は約10%だそうです。
録音図書の役割って大きいんですね。
日本点字図書館では現役アナウンサーを含む70名の朗読ボランティアさんが活動されているそうですよ。
この日は元衆議院議員の田中真紀子さんが録音図書づくりにいらしてました。ご自身の書いた本を自分の声で伝えたいというお気持ちから著者である本人が録音図書づくりに参加されることもあるようです。
素敵ですね。
次は3階を見てみましょう。
3階では主に点字図書の製作をしています。
多目的ルームもあり、そこでは中途視覚障害者の方が点字を学ぶことが出来ます。こちらもほとんどボランティアさんが活動されているそうです。
これが出来立てホヤホヤの点字図書です。
大きいでしょ。
一文字が大きいので点字翻訳するとページ数も増えるし大きくなってしまいます。読みやすいように点字自体も適度な間隔で打たれているようです。
カカカカカッ、ウィーン、カカカカカカカカッ!ウィーン…。
点字プリンターが元気よく動いています。
印刷機は輪転機から平台印刷機、凹版印刷機と色々見て来たけど、点字の印刷機は初めて見ました。
僕は誰も知らないだろうけど印刷好きなのです。
厚い本を綴じるのがこの機械。
ページ数が多くなるので無線綴じなんですね。
もはや印刷工場さながらです。いやそのものです。
書物だけが点字図書かと思っていたら、このような図や地図も点字図書の仲間なんですね。
これはある館内図を拡大したものです。
こう言ったものは「触図」と呼ばれています。
駅の券売機に点字があったりするでしょう?それも全部こちらで製作しているそうですよ。
3階フロアで製作された点字図書は収益事業の一つとしても行われているとのことで、通信販売で購入することも出来るそうです。
伊藤さんの丁寧なご説明を聞きながら僕はと言えば
「へ~、ほ―――ッ!なるほどですね」と興味津々に聞いているだけ。
社会見学そのもの(笑)
こんな絵も飾ってありました。
違います。伊藤さんでした。
さてさて、2階に行きましょう。
2階は点字図書と録音図書の貸し出しを行っているそうです。
こちらが点字図書を貸出するときの姿です。
点字図書は第4種郵便によって貸し出されます。
第4種郵便のうち点字図書や録音図書は無料で取り扱われるそうですよ。
初めて知りました。
こんなものがありました。
ラジオの番組表、広報物です。
小説や歴史書といった本だけではないのですね。
本間一夫氏のお部屋が館内にあるそうです。
行って見ましょう!
正面の素敵なお写真。この方が本間一夫氏です。
(素敵な笑顔です)
ここの本棚にある点字図書は、戦時中に貸し出していた図書です。物資が無いときですから、背表紙には着物の端切れを使ったものもありましたね。
本間一夫氏が朝日社会奉仕を受賞された時のお写真や色々な資料がここには展示されていました。
僕が言うのも変ですが、時代を感じ、本間一夫氏を感じられる素敵な場所でした。
写真は中外商業新報(今の日本経済新聞)に掲載されたものです。
ホント色々と勉強になります。
1階に戻って来ました。(2回目の1階です)
1階では事務所と視覚障害者用の用具を販売している「わくわく用具ショップ」です。
これルービックキューブ。懐かしいでしょ~。
色のついた面一つ一つに凸マークが付いています。全部手作りですって。
クルクル回してみたけど、通常のものより動きがスムーズに感じまいた。
お次はコレ。
これはマグカップです。
中に色がついているのが特徴。どこまで入っているかが分かるようになっているんですって。
お茶碗なんかも内側に色がついていて、使いやすいように様々な工夫がされていました。
まだまだご紹介しますね。
これはルーペですね。色んな形やサイズがあります。
視覚に障害がある人は見え方にも色々なパターンがあるそうです。
そう言った方々に対して色んな種類が必要なんですね。
これ面白いでしょ!オセロ!
僕は昔、祖父とオセロやるのが好きでしてね。僕も小学生だったから、いつも祖父に負けていました。
悔しかったなぁ~!
これ使えば、祖父がよそ見している間にインチキ出来たのに!ってね。
そんな風に思いましたね~。ちょっと違うかな(笑)
最後に地下1階~2階をご紹介します。
地下1階、2階には色んな図書が収納されています。
歴史に関するもの、その他様々な図書が保管されていましたよ。
ここには、点字図書を必要とされている方への、それこそ「溢れるほどの知識」が詰まっているんですよね。
さて、3回目の1階に戻りましょう。
今回、日本点字図書館の事業やサービスなどをご報告させていただきました。
今後は視覚に障害がある人への声のかけ方、接し方など引き続き取材を続けてご報告させていただこうと思っています。
最後に、僕の心に残った本間一夫氏の言葉をご紹介させていただきます。。
「権利において、義務において、晴盲二つの世界があくまでも公平でなければならぬ」
(昭和15年11月10日当館発行「図書館ニュース」創刊号より、本間の言葉)
ご案内していただいた伊藤様、そして協力していただいたスタッフの皆様、本日は誠にありがとうございました。
また来ますね。
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DATA
社会福祉法人 日本点字図書館
住所 〒169‐8586 東京都新宿区高田馬場1‐23‐4
電話番号 TEL 03‐3209‐0241(代表)
ホームページ http://www.nittento.or.jp/